「ずっと一緒にいようね」「死んでも一緒にいようね」 ってことほど、本当になったら怖いことはない。
時間が戻るというのは、昔からある普遍的な題材だ。
ただ、それをいろんな時代のいろんなクリエイターが挑戦してきているというところに意味を感じていて。クリエイターのひとりとして、以前から興味があった。
――タイムリープの設定とカップルの会話劇から描き出そうとしたのは、永遠という怖さ。熱いカップルなら、「ずっと一緒にいようね」「いや、死んでも一緒にいようね」といった会話を何気なくした経験があるだろう。
しかし本当にそれが起こったら、どんなに恐ろしいことか。今回はそれを映像で描き出そうと考えた。
人はみんな死にたくないじゃないですか?でもいざ死ねないってなったら、それはすごく恐ろしいことです。手塚治虫先生が描いたことでもあるんですけども。
“時間”には限りがあるからこそ愛おしいし、一生懸命生きていけると思うんですけど、時間という限りがなくなって、永遠に生が続くことによる怖さのようなものを描きたい。
――時代の分岐点に立ってどう動くかを考える『太陽-TAIYO-』と、ループする永遠の時間という縛りの中で何をすべきかを考える『(仮)トノムラ』。その“時代”にとっての“時間”の意味を描き出す、僕なりの流の切り口である。
そうそう、『太陽-TAIYO-』というショートフィルムは昨年作ったもの。
『太陽-TAIYO-』は、本当に限りがある中でそれをどう乗り越えていくか。
こちらがその『太陽-TAIYO-』
(出演 高良 健吾 藤原 大祐 佐藤 緋美 モトーラ 世理奈 水川 あさみ/主題歌 「こうなるとは思わんかったな〜」by TOGITO)
『太陽-TAIYO-』は、本当に思い出深い。時間から脱出するというサスペンスアクションだ。
『トノムラ』の場合は、限りがない時の中で生きるために何を見つけるか。こういうことを頭の中に置きながら話を考えていきました。
――今作の基本的な軸は会話劇。ワンシチュエーションが10分弱続くことから、画としてもたせるために、様々なカメラアングルで撮影する必要があった。
また、撮影時間は限られており、スタッフ構成も少人数。撮影カメラの選定にあたって、LUMIX S5IIXの機動力とカットバックにおけるフォーカス精度の高さが、今作の撮影で求められる条件に合致していると判断した。
S5IIXはこの作品の撮影前、別の仕事でテストをしたときにオートフォーカスと手ブレ補正機能がものすごく強くなっているのを感じました。
レンズの選択肢も元々多いので、少人数でもかなり良いクオリティのものがつくれそうだなと。
S5IIXを使えば、ワンシチュエーションの会話劇でも様々な画をテンポ良く撮れるのではないかとチャレンジしたのだ。
S5IIXのマルチカム撮影だから実現できたビジュアルとは?
手持ちでも三脚を立てたかのような安定した映像を撮影でき、スピード感をもって様々なカット収録を行えた。
これは本当の話で、それこそジンバルとかステディカムを使っているのかなというぐらい滑らかな動きで撮れた。

また、人物のちょっとした移動や、奥から手前へ歩いてくる様子、あるいはドアから入ってきてアクションする様子などの撮影でも、しっかりオートフォーカスが付いてくることにも驚いた!。
クルーにフォーカスプラー(フォーカスマン)がいても、何回もやらないと合わないんじゃないかというシーンでもピッタリ合っていて。
使っていて本当に驚きました。液晶モニターをタッチしてフォーカスを動かすときも、反応スピードを選べる。
ここも撮影前に手に馴染ませておいたので、狙い通りのフォーカス移動ができました。
――本編中、主人公の男性がトイレで独白するシーンは当初、かなりカットを細かく割って撮影しようと考えていた。
しかし一度S5IIXで撮ってみたところ、その強力なオートフォーカスと手ブレ補正機能から、急遽長回しのトラベリングショットに変更することにした。
そんなことがたくさんあって。これ以上は映像ギークの世界で説明するとしよう。


――機材のセッティングやカットの時間を節約できたことで、その日の撮影では予定していた以上のテイクを撮影。
ワンシチュエーションを10分弱持たせるために必要な、あらゆるアングルからの画を1日で撮りきった。
今回は最大3カメでの撮影となったが、柿本氏はこれらをシネマカメラに置き換えたとして、サイズ、機動性(撮影距離)、コスト、撮れ高においてS5IIXに優位性があると感じたという。
でもS5IIXなら、ひとりの人物を3カメで撮影するにしても少人数でできますし、小型ですからかなり被写体に近づける。セッティングが簡単で機動性も高いので、手数も増やせる。
いいことづくめだ。
これは単なるメリットではなくて、S5IIXを使うことで画の拡張性がものすごく増えるという話です。


そんなこんなで、作品が出来上がっていく。
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